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抗がん剤の副作用によるしびれが起こる原因は?
抗癌剤治療の副作用症状としてよく聞くのが手足のしびれ。原因は、運動や感覚を伝える末梢神経の障害です。抗がん剤により正常な神経細胞が傷つき、結果、手足のしびれや痛み症状が現れやすくなります。
その他にも末梢神経障害により「指先に違和感がある」「指先がピリピリする」「感覚が鈍い」「歩くとつまずく」「手足に力が入らない」などの様々な症状が起こります。
特に末梢神経障害が起こりやすい抗がん剤として、パクリタキセル、シスプラチンなどがあります。
しびれの症状が出るまでの期間と症状がいつまで続くか?
個人差はありますが、抗がん剤治療を開始して約2~4週間位で手足のしびれ等の不快感を感じることが多く、症状が改善するまでの期間は個人差があります。
神経細胞を再生させないといけないため、数ヶ月で治まる方もいらっしゃいますが、抗がん剤の投与量や投与回数が多い方の場合は、症状が治まるまでに1年以上かかる方もいらっしゃいます。
病院での治療は?
しびれに対しての確立された治療法はなく、主に抗がん剤の薬剤減量や薬剤の変更、治療を中止することや対症療法が中心となります。
対症療法として
ビタミン剤や漢方薬の絵
ビタミンB6・B12などの複合剤
ビタミンB6-体内での神経活動の補助や神経伝達物質の合成などの補助などが期待でき、その他にも赤血球の形成や皮膚粘膜の修復などの効果が期待できます。
ビタミンB12-末梢神経を構成する成分のタンパク質を生成して傷ついた神経の修復作用に繋がり結果、痛みやしびれの軽減に繋がります。
その他にも血流促進や免疫力を正常にするなども期待できます。これらは病院でも市販でも売ってますので主治医や薬剤師にお尋ねになるといいです。
しかしな、即効性があるわけではありません。
漢方薬の使用
牛車腎気丸は抗がん剤による末梢神経障害に対しての有効性が報告されている漢方薬になります。神経の保護にも繋がり、その他にも体を温めて血液循環を良くする牡丹皮や経皮、附子などの生薬が含まれ、しびれや痛みの緩和につながると言われています。
また、血行促進と神経の回復の効果が期待できる疎経活血湯や関節や筋肉の痛みの緩和として芍薬甘草湯などが処方されることもありますが、効果は様々です。
そのため痺れの症状が重い場合や長引いている場合は、抗がん剤の副作用の予防や、神経細胞の補修の仕方に詳しい、医師や薬剤師などのお尋ねになるのがいいでしょう。
しびれと同時に神経性の疼痛が起こる場合
痛みの軽減や原因となる炎症を軽減させるために非ステロイド性抗炎症剤が使われます。主に軽い痛みに対して使用され、一般のドラックストアでも販売がされておりアセトアミノフェンなどがあります。
その他にも病院からの処方箋との含有量は違いますがイブプロフェンなどがあります。基本的には経口で使用されることが多いのですが、注射による治療もあります。
しかし、痛みが酷く、非ステロイド性抗炎症剤で痛みのコントロールができない場合には、様々な痛みに対して高い効果が期待できる「麻薬性鎮痛薬」を使用される場合もあります。
しかし、継続して使用することで副作用のリスクが高い治療になり「意識障害」「眠気」「便秘」などが起こる方もいるため、医師が経過を見ながら治療を継続するか中止にするかの判断をします。
また、麻薬性鎮痛薬は非ステロイド性抗炎症剤や抗うつ薬抗けいれん薬と併用することで高い効果が期待できる治療となります。
病院の薬で良くなる?ドラックストアの漢方薬はどうなの?
末梢神経障害による「しびれ」の緩和に対して、ドラックストアで販売されているお薬としては傷ついた神経を修復を助けるビタミンB剤が含まれたアリナミンやナボリンなどがあります。
また、漢方薬ではしびれや痛みの緩和に有効と言われている牛車腎気丸や芍薬甘草湯がありますが効果はご状態によって様々です。その他にも薬剤師や漢方相談員の見立てや腕前、お薬の内容によって効果は様々です。
なかなか長引いてる痺れの回復は、痺れに詳しい漢方専門外来、専門の薬局、薬店などで購入されるのが安心です。
自分で出来ることは?
●体を冷やさないようにしよう
体が冷えると、血流が悪くなり、症状を強く感じる方が多いです。夏はクーラーの温度は下げ過ぎず クーラーの部屋を寒く感じる方は、羽織るものを準備しておきましょう。冬は外出する際は、風が肌に直接当たるのを防寒着・マフラー、手袋などで防ぎましょう。
●お風呂は湯船につかろう
シャワーで済まさずにぬるめの湯船にしっかりと浸かり、体を温めましょう。体が芯から温まれば、 内臓も活発に動き出すため、血流が良くなります。また、炭酸入浴剤や生薬(よもぎ・ショウガなど) を使った入浴剤を入れると更に効果が高まり、お風呂上りも温まった体を持続させます。香りで リラックス効果も高まります。
●無理のない運動を取り入れましょう
過度な運動を取り入れる必要はありません。症状のある手足や指先を曲げたり伸ばしたりの運動から 始めてみましょう。また同じ姿勢・体制をとり続けるのも、血流を悪化させます。ストレッチなども 取り入れながら、血流を保ちましょう。
●しびれが出てるところをさすってみよう。
さすった時にしびれがどうか、強さはどうかを見ながら取り入れてみましょう。楽に感じる、痺れが 和らぐのであれば良いですが、まれにしびれが増す場合もありますので、違和感があるときは止めましょう。
●締め付けが強い洋服や靴下、ストッキングは控えましょう。
締め付けが強いと、血流を悪化させる原因になります。長時間の使用は控えましょう。
●整体や鍼灸も試してみましょう。
全身にあるツボの道筋の経絡の通りが悪い場合には痺れが出てくる場合があります。筋肉が硬くなったりして血行が悪くなる場合もそうです。
そのため鍼灸師や整体師に通う事も痺れを早く改善させる意味でお勧めです。長引く場合には東洋医学の知恵を取入れるといいでしょう。
抗癌剤の副作用による痺れを軽減させる方法
抗癌剤による痺れ症状を軽減させるには
※ニンニクの絵、人参の絵、錠剤、こなぐすりなどサプリの絵
①血流障害改善
東洋医学では痺れの原因は血液循環の低下と考えます。血流改善を行い細胞や組織へ酸素や栄養素をしっかりと補い、細胞と組織の活性化と修復の促進に田七人参、高麗人参などがおすすめです。
②しびれや痛みの原因となる炎症を軽減させる
体に炎症が起こると、神経細胞が傷つき、しびれや痛みの原因を作ってしまいます。また炎症は、血液循環の低下の原因にも・・・その炎症の軽減対策に白花蛇舌草・半枝蓮などの薬草があります。特に炎症を軽減させる力が強く、しびれや痛みの緩和に効果的。更に血流の改善も期待できる漢方薬です。
③体を温めしびれの緩和と新陳代謝の向上
体を温め、冷えを改善することは、しびれや痛みの緩和に有効で、体が温まると新陳代謝も高まり、細胞や組織を修復する力も向上します。
体を温め、新陳代謝を高るために、牡蠣やマカ、ニンニクなどが含まれたサプリメントや大根やレンコン、人参などの根菜を積極的に取ることもおすすめです。冷えの原因となる砂糖や冷たい飲み物などは控えましょう。
まとめ
抗がん剤の副作用で起こる手足のしびれは、抗がん剤による神経細胞へのダメージと、貧血や血流不全によって引き起こされます。抗がん剤を中止し、栄養をしっかり取り、自分の自然治癒力を高めて、壊れた神経細胞を補修していくことが一番ですが、抗がん剤を中止という選択が難しい場合が大半だと思われます。
そのため痺れが気になる方は抗癌剤の副作用を受けないようにしていくことを考えたほうがいいと思われます。そのためビタミン剤や漢方などを併用して、あとは身体を冷やさないようにすることが現実的だと思われます。
しかし、その痺れの症状の程度や、長さ、痺れを治療する漢方などの品質やレベルがありますので、そこは痺れの解消法に詳しい医師や薬剤師などにお尋ねになるといいと思われます。
その他関連リンク
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/141/2/141_76/_pdf
http://jpps.umin.jp/issue/magazine/pdf/0401_01.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/136/5/136_5_275/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/143/3/143_126/_pdf
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/125/125-2/yoshida1252.pdf
著者紹介(共著)
千葉県松戸市 医師 村上 信行 |
福岡県北九州市・榎屋相談薬舗(株) 代表 漢方薬剤師 |